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何を言っているんだ、と言いたげな顔をしていると、アンシェロントが笑いながら続けた。
「あたしは、あの日からこの世界の人間。血塗られた戦場に生きるあなたの家族。
それに――たとえ今、あちらへ行けたとしても、もうあたしの居場所は無い。あるのは…孤独と死、のみ。そんな風に死ぬんだったら、あたしはあなたの側で死にたい。
独りは嫌だよ、ジェロ」
アンシェロントの笑顔が歪み、口元が歪み、眉も歪み、目元から涙が零れ落ちる。
久々に見る、彼女の涙。
それは、とても痛かった。
「独りで死にたくない。独りで生きるなんてイヤ。死んだ方がマシ。でも、ジェロが居ない場所で死ぬのはもっとイヤ。イヤだよぉ」
ほんの五歳の子供のように手を付けて泣くアンシェロントを、ジェルブロートはきつく抱きしめた。
「じぇろぉ~」
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