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「…俺と一緒に行きたい、そういうことかな?」
一緒に…その言葉に反応し、こくりと一度、大きく頷いた。
「ふっ…いいのかい?俺について来たことを、いつかきっと後悔するよ。」
後悔なんて、どうでもよかった。
とにかく自分の居場所が欲しかった。
何度か似たような質問をされたけれど、私が首を横に振ることはなかった。
「見逃してあげようと思ったのに…」
ぼそりと何かを呟いた彼。
聞こえないよ、と。
握ったままだったズボンの裾を、すっかり冷えきり悴んだ手で、力の限り引いた。
それに気づいたらしい彼の口角が上がる。
「俺について来る…そう決めたのは、君だよ。」
私が小さく息をのむと同時にゆっくりとしゃがみ込んだ彼が、私の顎に指を添え、軽く持ち上げる。
何がなんだかわからない、そんな私の耳元で、彼は囁くのだった。
「もう、逃がさない。」
賑やかなはずの街の音が、一瞬かき消されたような…そんな気がした。
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