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「ふっ…逆らうでもなく、諦めるでもない、か…面白い、気に入ったよ。 君の名前は?」
「………山吹、波瑠南…。」
「波瑠南か…いい名前だね。」
「っ!」
なんの違和感もなく私の名前を呼ぶ彼に、胸が高く鳴る。
温かい…名前を呼ばれることがこんなにも幸せだということを忘れかけていた私の心に、彼の優しい声はこの上なく染みた。
もう二度と、こんな風に呼ばれることはないと思っていたのだ。
「…行こうか。だいぶ長いこと外に居たんだろう?早く温まらないと、風邪を引いてしまう。」
ふと、彼に手を差し伸べられる。
久しく向けられることのなかった優しさの連続に、思わず瞳の奥が熱くなる。
溜まった涙が零れ落ちるまで、そう時間は要さなかった。
「…うんっ!」
私は彼の手に自分の手を重ね、いつぶりかの笑顔で大きく頷いた。
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