プロローグ

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「…あなたの名前は、なんていうの?」 少し歩いたところで口を開く。 私が言い終えてすぐに、彼の口端が怪しくつり上がる…当然、すっかり浮かれていた私は気づかない。 自身の手を包み込む大きな手が小さく震えた時、私は漸く彼の顔を見上げた。 それと同時に、背筋が凍るような感覚がはしる。 「ふっ…俺の名前は、海藤南琉。またの名を…殺し屋の、ソウ。」 「っ!………え?」 ふたりの間を、勢いのいい風が強く吹き抜ける。 殺し屋…耳を疑う言葉に、思わず足を止めた。 彼の瞳が…光のない濃い紅色が、私の視線を逃さない。 呼吸までもが止まってしまいそうな中、やっとの思いで唾液を飲み込み、何か言葉を紡ぐべく、口を開く。 「…な、南琉って、言うんだ…あ、あのっ…よろしく、ね…?」 私の顔から、跡形もなく笑みが消える。 身体が震えて上手く話せない…何もない、ただ普通のことを言うだけだというのに。 「ああ…よろしく、波瑠南。」
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