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『それよりみちる。
魔導器は無事?』
「あっ、忘れてた」
あまりに必死だった為、目的を見失っていた。
しかしそれでも、手にはしっかりと魔導器が握られていた。
かなりぞんざいな扱いだった筈だが、芸術性の高い魔導器には傷1つ無く見える。
「…何とも無いみたい」
掲げて見せるのが確認出来たのか、愛と凛子から、安心したのか吐息が洩れる。
『大変だっただけに、今度こそ当たりであって欲しいけれど…』
『早く戻って、鑑定してみないとね』
「あいちゃん…
ここから相当あるんだけど。
帰り道もサバイバルだね」
今居る遺跡地点は、やや小高い丘の上にある様だ。
見渡せば、辺りは鬱蒼とした樹海が広がる。
人里に下るのは容易ではないだろう。
『そうね。
帰路を思うと憂鬱になるわね…』
『あの御者、変態だったけど帰したのは失敗だったかな?』
『止してよ。
だって変態よ?
あんなセクハラ、耐えられないわ。
あの下品な顔見るくらいなら、毛虫と戯れてた方がまだマシね』
「あははっ!
りんちゃんひどっ!」
3人の笑い声が互いを満たしていく。
過酷ながらに己れを見失わない、運命に立ち向かう少女達の、これは、ある日の1ページ。
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