9人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「どういう意味?」
凛子の問いに、フランツは一度頭の中を整理し、口を開いた。
「『存在位置』。
先程言ったこれは、どんな存在にも、唯一無二のものとして定められている。
1つの存在に1つの『存在位置』。
これは絶対の法則だ。これを逸脱するなんて有り得ない」
フランツは凛子を、そしてみちると愛を順に見ていく。
「だが、今の君達は違う。
1つの『存在位置』に、君達3人が“重複”している。
これは、非常に危険な状態だ」
きつく、そして真摯な眼差しは緊張感を持たせる。
彼の言葉は、恐らく真実。
それが伝わるから。
「…どう危険なの?」
だから、凛子もフランツの真剣さに応える。
「前に、『転移』の研究をしていた1人が、事故を起こした。
些細な術式の構築ミスだ。
だが、変換組成が狂い、周囲の人々の『存在位置』をも曖昧にした」
「…どうなったの?」
言葉を切ったフランツの様子からは、最悪の結末を予感させた。
「消えたよ。
身体の一部を残してね」
静かに語られたそれを前に、3人は背中に冷たいものを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!