リスタート

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「ありがとう、フランツさん」 不意に、みちるが謝辞を送る。 「え?」 思いがけない言葉に、フランツが固まる。 「だって、私達の為に、そんなに悩んでくれてるんだもん。 正直難しい事はよく分からないけど、それでも、フランツさんが良い人なのは分かるよ」 「え!?  あ…いや」 途端に赤面するフランツ。 「…まぁ、出来るだけ考えてみるよ。 それと確認なんだけど、君達は魔法を知らない。 それって、『ティア』の住人ではないって事かな?」 「『ティア』?」 凛子が聞き返す。 それだけで、もう聞く必要は無いだろう。 「『ティア』とは、この世界の名前だよ。 …君達が元の世界に帰る事を想定するなら、魔法で維持する様なシステムも避けるべきだね。  分かった。  少し考えてみるよ」 そう言ってフランツは3人に背を向け、室外に続く廊下に向かう。 「フランツ!」 凛子が呼び止める。 「なに?」 「さっきはその…悪かったわ。  勝手な事ばかり言って。  ごめんなさい」 フランツに向け、深く頭を下げる。 「いいよ。  気にしてないから。  また後でね」 罪悪感を瞳に宿らせ、凛子はフランツを見送る。 凛子はプライドの高い女性だ。 しかし、自身にも厳しい側面を持つ。 自分が間違えていながらそれを正当化する事も、凛子のプライドは許さなかった。
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