トライアル

4/31
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
「そ、そんなもん知るか!  舐めやがって…」 横柄な男が凛子の襟首を掴もうと手を伸ばしてきた刹那、その姿をみちるに変える。 みちるは伸ばしてきた手の親指を握ると、男を後ろ手に床に抑え込んだ。 「もう、りんちゃん。 ケンカ売るだけ売って、こっちに押し付けないでくれる?」 『何よ。 みちるだって頭にきてたでしょ?』 「それはそうだけど…」 「いててっ!  何だお前!?  どうなってやがる!?」 みちるの下で、うつ伏せでうめく男。 「もうやめなよ。 大人しくしてくれるなら離すよ」 「誰がっ!」 どうやら引き下がる気はないようだ。 「てめえっ! ヘデロさんを離しやがれ!」 三下の取り巻きの1人が、腰の剣を引き抜いた。 これには、傍観していた冒険者達も目の色を変える。 「お前ら… ギルドの取り決めを知らないのか? ここで武器を抜くとはな…」 「う…」 凛子に親しげに話し掛けていた、1人の冒険者の怒気に当てられ、すごすごと抜いた剣を鞘に納める。 「やるなら素手でやれよ。  魔法も無しだ。 まぁ、お前らごときじゃ“アトラシア”に勝てる訳無いけどな」
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!