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(なんだったんだろうあれは)
(なんなんだろう、この、痛みは)
本当に、コマ送りなんだ、と、絶望の中ぼんやり考えた。
それから、衝撃。
(神様はひどいや、せっかく無くしたくないものをみつけたのにさ、)
せっかく、幸せだと思えたのに、
なんて 勿体ない。
フラッシュバック、いつかの記憶。笑うのはあいつらで、景色はひたすらにあの日常のような非日常。
視界が赤に染まり、次いで白に。
それから僕は、冷たくて温かい 明るくて黒い、不思議な場所へとおちてゆく。
ああ
僕は
死ぬんだ
この冷たくて温かい、明るくて暗い、このえもいわれぬ感覚。
うれしいような、かなしいような、そんな感情。
不思議だね、痛いはずなのに痛くない。
こわいのに、こわくない。
きっと、これがしぬということ。
遠ざかる車のエンジン音、人々の悲鳴。それだけが耳を通り抜けて。
この空虚感が死だというのなら―――、即死もさせてくれない神様は、やっぱりひどいや、
ぐるぐる回る、飽和しきった思考で考えるのは、形にならぬものばかり。
そのとき、だ
「――――あずさ!」
ほとりと、言の葉がひとつ、落とされて
僕のからっぽの頭に 反響した
(ああ、)
随分ぼやけた視界に写るのは、固いアスファルトと赤いもの、それから、
「あずさ!?うそだろ、!」
(、なにそんな切羽詰まった顔してんだよ、ばぁか)
「なんでだよ、馬鹿!!」
(そっちがだろ、なにそんな辛そうな顔してんの)
「まってね、もうすぐだから、救急車、くる、から!」
(なに泣いてんのさ、鼻声だよ、美声自慢が聞いて呆れる)
いつか互いに落書きしあったスニーカーが アスファルトを踏み付けて駆けてくる。
それだけやけに鮮やかにみえて、痛まぬはずの心臓がずくんと、痛んだ。
神様、やっぱ即死させないでいてくれて、ありがとう、
最後にこいつらを見せてくれて、ありがとう、
伝えたいことが、伝えなきゃならないことが、できたから。
ねぇ、聞いて、
(幸せだよ)
みんなと会えて、ほんとうに。
幸せだから、だから最後にひとつ伝えなきゃ。
「 あ り が と う 」
最愛なる馬鹿たちへ、
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