サバイバルゲーム

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アレックスは、驚くしかなかった。マウンドで、目にも止まらぬ豪速球を放るそれはなんなのか。アレックスは決して打撃が不得意ではない。なかなかミート力もある。 「ストライーク!ツー」 審判のコールが聴こえる。また動けなかった。そしてやっと気づいた。目の前の青年、桐生与一は、紛れもない“天才”なのだと………。 「ストラック!バッターアウトォ!」 アレックスは三振し、続く打者は二番、ピッチャーの市ノ川。その市ノ川は、バッターボックスに入った時点で震えていた。 (あんな球打てる訳がないだろう…。) 市ノ川はビビった時点で負けだ。 バットを手にとる。一度、二度、スイングをする。風切り音が心地よい。市ノ川が三振して戻ってくる。胸の鼓動が激しくなる。ゆっくりと雄太が打席に立つ。 「よし来ォーい!!」 桐生と目が合う。自分にあの豪速球が打てるのか…。雄太は不安になる。桐生が振りかぶる。豪快なワインドアップ。その右腕から、怪物のように唸りをあげる速球が迫り来る。
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