サバイバルゲーム

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初球は、空振り。思い切ってスイングしたため、ヘルメットがズレた。ズレたヘルメットから、桐生が見える。嘲笑うかの如く、既に振りかぶっている。あまりのテンポの早さに、雄太は焦って構えた。 スイングしかけたバットを止めた。何故なら、白球はもうミットに収まっていからだ。捕手の竜崎から返球を受け取ると、桐生は直ぐに振りかぶった。本当にサインを決めているのか?そう思う程だ。 雄太は決め球を絞っていた。それはストレート。先程まで桐生はストレートしか投げていない。それにかけたのだ。狙い打ちすればさすがに打てるだろうと、雄太は思った。 白球が唸りを上げて向かってくる。やはりストレート。 (もらったァ!!) バットがボールに向かい動き出す。確実に真芯で捉えた。確かに、そう思った。いや、真芯で捉えた筈なのだ。 驚く事に、140キロは出ているであろう速球は、打者の手元で横変化した。芯で捉えた気持ちいい音とは違い、鈍い音が聞こえた。腕が球威に圧されて痺れている。パワーにだけは自信があったのに、圧されたのだ。 フラフラと力無く上がった打球は、重力に任せて落下してくる。桐生がグローブを空に向ける。白球は、そのグローブの中に収まった。「アウト!チェンジ!」 審判がコールする。雄太は納得いかないような表情で、ベンチに戻っていった。
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