高速の男

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アレックスが審判に一礼し、右打席に入る。やはり、マウンド上のその男は、特殊な雰囲気を出していた。しかし、アレックスは飲まれていなかった。雄太の先程の言葉で、闘争心を取り戻していた。 だが、雄太はそのようなつもりで言ったのではなかった。落ち込んでいるメンバーと、マウンド上の桐生がムカついたから言っただけなのだ。しかし結果的には、雄太の自己中がアレックスの闘争心に火をつけたのだった。 アレックスは、深呼吸をする。グリップを握る手に力を込めた。桐生が振りかぶる。やはり豪快なフォームだ。初球、内角高めに直球。アレックスは大きくのけぞったが、審判はストライクとコールした。
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