高速の男

5/10
前へ
/99ページ
次へ
ショートの碇矢がダッシュで前に突っ込む。 「ちいっ…!」 しかし、打球は捕球寸前に跳ねた。碇矢を嘲笑うかのように。碇矢は打球をなんとか捕球すると、すぐさまファーストを見た。 アレックスは既に一塁寸前まで来ていた。まさに高速。この言葉しか見当たらないだろう。碇矢は焦って送球した。しかし、送球はファーストのミットに収まらず、ファーストを大きく越え、フェンスの所まで遠ざかった。 「回れー!!」 そんな声が聴こえた気がした。自然とアレックスは一塁ベースを蹴っていた。二塁ベースも蹴る。誰も自分を止められない。そう思った。 ファーストから返球がくる。サードは捕球して直ぐに、タッチをしようとする。アレックスもスライディングをする。 普通ならばアウトのタイミングだっただろう。しかし、信じがたい事にアレックスはスライディングになってから更に加速した。三塁ベースには確かに、アレックスの脚の方が先に辿り着いていた。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加