10人が本棚に入れています
本棚に追加
なおみ
「…ごめんね。…ごめんね。純二さんが励ましてくれてるの、とてもよく分かってるし、嬉しい。…でも、やっぱり、…帰りたくない。このままずーっと、ここにいたい。もう、純二さんと離れたくないっ!」
純二
「なおみ…」
純二はなおみをきつく抱きしめた。
純二
「馬鹿だなぁ。また会えるじゃないか」
なおみ
「でも…」
純二
「帰らなきゃ…。今回は遊びに来たんじゃないんだし、先生にも迷惑かけるだろう」
なおみ
「…うん、そうだよね」
なおみは、純二に抱きしめられたせいか、段々と落ち着きを取り戻していった。
純二
「…なおみ、お化け屋敷に行こう」
なおみ
「えっ!?」
純二
「あそこなら人も少ないし、真っ暗だし、何したってわからないよ。そのあと観覧車。観覧車は個室だから2きりになれる」
なおみ
「何したってわからないって、何かする気なの?」
純二はただニヤッと笑うだけだった。
純二
「ほら、行くぞ」
なおみ
「う、うん」
お化け屋敷はやはり、係員が入口に1人いるだけで、客はいなかった。
なおみ
「…やっぱり怖いよ」
なおみは、純二の手を引っ張って嫌がる。
純二
「大丈夫だよ。ほら、おいで」
純二は、なおみの肩を抱いて中へ入っていった。
純二
「こんなのみんな作り物だから、ちっとも怖くないよ。音も、俺の声だけ聞いていればいい」
コースのほぼ中央辺りで、2人は立ち止まった。
なおみ
「純二さん、早く出ようよ」
純二
「…しばらくここにいる」
なおみ
「えっ!?」
純二
「…俺、名古屋駅まで送っていくけど、みんなが見てるんだから、この間みたいに泣くんじゃないぞ。正月にはまた会えるんだから」
なおみ
「…うん」
純二
「なおみ…」
なおみ
「…はい」
純二はなおみを抱きしめる。
純二
「俺だって、お前を東京に帰したくない。ずーっと俺の傍にいてほしいと思ってる」
なおみ
「…純二さん」
そして2人は見つめ合い、人もお化けも羨むような熱烈で長いキスをした。なおみは、別れる寂しさと、純二に愛されているという実感に満たされ、涙を流す。キスが終わると再び抱き合った。
純二
「なおみ…」
最初のコメントを投稿しよう!