夕陽の中で 第4章

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なおみは、首を横に振った。みんなも驚いていた。なおみはその理由を言った。 なおみ 「近くの駅なら私たちだけだと思うから。…思い切り泣ける」 純二 「なおみ…。いいのか?それで」 なおみ 「…うん。どこで別れても、寂しさや悲しさは同じだもん。時間的に早いか遅いかだけで…」 こずえ 「でも名古屋駅ならそれだけ長く一緒にいられるのよ?いいの?」 なおみ 「…うん」 純二 「…わかったよ。じゃ、桑名駅だな」 桑名駅へは、長島温泉から15分くらいのところにある。集合場所ギリギリに名古屋駅に到着する電車が来るまで、まだ40分ほどの時間があったため、純二となおみ以外の4人は、駅に隣接する銘店街を見に行った。純二となおみは、2人きりで時間まで駅前のロータリーなど、話ながら散歩していた。そして、電車が到着する10分前、みんなが改札口に集まって、純二との別れを惜しんだ。 こずえ 「竹本さん、どうもお世話になりました」 孝行 「ここからは俺たちだけで行けるから」 純二 「でも…」 智子 「わかった!なおみと離れたくないのね」 純二 「そういうわけじゃ…」 なおみ 「…純二さん、ここでいいよ。ありがとう」 純二 「なおみ…」 守 「俺たちは先にホームに行ってるから、ゆっくり来いよ。まだ時間はあるから」 なおみ 「うん、ありがとう」 孝行たちはホームへと消えていった。 純二 「…」 なおみ 「…」 時間的に今は空いていて、周りには誰もいない。 なおみ 「…それじゃ、またね」 純二 「なおみ…」 純二は、なおみを強く抱きしめた。 純二 「なおみ、このまま離したくない」 なおみ 「純二さん…」 なおみは、自分に泣いちゃダメと言い聞かせるが、そう思えば思うほど、涙が溢れてきた。2人は、長い間抱き合ったまま動かなかった。 なおみ 「じゃ、時間だから…」 純二 「…」 純二はゆっくりと手を緩めた。しかし、再び抱きしめ、別れのキスをした。 なおみ 「…純二さん…」 純二 「なおみ…、じゃ、またお正月に…」 なおみ 「うん。さよなら。元気で…」 純二 「なおみも…」 なおみは、純二の姿が見えなくなるまで、何度も振り返った。
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