夕陽の中で 第4章

7/106
前へ
/106ページ
次へ
孝子 「任せておきなさい」 なおみ 「おばさま、ありがとう」 2人は喫茶店を出て、しばらく一緒に歩いた。 なおみ 「おばさま、ごちそうさまでした」 孝子 「また誘ってもいいかしら」 なおみ 「はい」 孝子は家に帰り、純一になおみの事を話した。 孝子 「純一、あなた最近なおみちゃんに冷たいんですってね」 純一 「誰がそんな事言ったんだよ」 孝子 「今日、なおみちゃんに偶然会ったの」 純一 「なんだよあいつ、人にベラベラしゃべりやがって…」 孝子 「そんな事言うもんじゃないわよ。なおみちゃん、真剣に悩んでたわよ」 純一 「…」 孝子 「どうしてもなおみちゃんに冷たくするの?本当の兄妹なのに…」 純一 「…」 孝子 「言いなさい」 純一 「…何で俺達が兄妹なんだよ。今までずっと好きだったなおみが妹だなんて…」 孝子 「純一…」 純一 「兄妹だから…なおみのこと、今でも好きだから…。でも兄妹ってわかってどうしたらいいかわからなくて…。なおみのこと、忘れようと思って…」 孝子 「そうだったの。ごめんなさい…。私たち親の勝手であなたたちを引き離してしまって…。なおみを手放していなかったら、純一となおみは兄妹として育ったのに…」 純一 「母さん…」 しかし、それ以来純一となおみの間に、会話はすっかりなくなってしまった。それからしばらくして…8月、なおみのアルバイトの給料日。 店長 「はい、1ヶ月ご苦労様でした。指定の銀行に振り込まれるからね」 なおみ 「ありがとうございます」 なおみはアルバイトが終わると、店のキャッシュコーナーで2万円だけ引き出した。 なおみ 「ただいま!」 良子 「おかえり」 なおみ 「パパとママに、これあげる」 なおみはさっき引き出した2万円を、良子に渡した。 良子 「何のお金?」 なおみ 「今日お給料日だったの。初めてのお給料だから、パパとママにも使ってもらおうと思って…」 良子 「もらってもいいの?」 なおみ 「うん。日頃の感謝の気持ち」 良子 「ありがとう」 その夜、なおみは純二の携帯に電話をかけた。 純二 「はい」 なおみ 「もしもし…、純二さん?」 純二 「なおみか?元気か」
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加