夕陽の中で 第4章

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なおみ 「うん。なんか久しぶりだね」 純二 「そうだな。俺も忙しかったし、お前もバイトだろ?」 なおみ 「うん」 純二 「今日はどうした?」 なおみ 「久しぶりに声が聞きたかったから…。それに…」 純二 「それに?」 なおみ 「夏休みだし、旅行しようと思って」 純二 「どこへ?」 なおみ 「どこへって…、忘れたの?」 純二は、5月末に東京駅でなおみと別れた時の事を、すっかり忘れていた。 なおみ 「純二さん、あの時言ったでしょ。パパが許してくれたら四日市に来いって」 純二 「じゃ、こっちに来るのか?」 なおみ 「パパの許しも出てるしね。私がそっちに行くこと、喜んでくれないの?グスン」 純二 「泣くなよ。嬉しいに決まってるじゃないか。で、いつ来るんだ?」 なおみ 「純二さんの都合に合わせる」 純二 「そうか。でも2日くらいしか休み取れないぞ」 なおみ 「それでもいい。側にいれるだけでいいんだもん。顔が見られるだけで…」 純二 「なおみ…。かわいい事言うじゃないか。じゃぁ7日頃来いよ。8日は休みだし、9、10日と休み取るからどこかへ連れてってやるよ」 なおみ 「うん。ねぇ、ホテル代までないから、純二さんのアパートに泊まってもいい?」 純二 「俺は構わないよ」 なおみ 「ほんと?よかった」 純二 「よし、じゃ名古屋まで迎えに行ってやるよ。そうだなぁ、新幹線の西出口に売店があるから、そこの前で待ってろ。時間はまだわからないのか?」 なおみ 「うん。明日切符買ってくるから、また明日電話する」 純二 「わかった。待ってるよ。じゃ、また明日」 なおみ 「うん」 純二 「なおみ…、愛してるよ」 なおみ 「やだぁ、純二さんったら…。じゃ、おやすみ」 純二 「おやすみ」 なおみは、久しぶりに純二の声を聞き、うっとりしていた。それに愛していると言われて、赤面したまま居間に入って行った。居間では良子がソファーに座って、テレビを見ていた。 良子 「あら、なおみ、どうしたの?赤い顔して」 なおみ 「え?私、赤くなってる?」 良子 「熱でもあるのかしら」 なおみ 「ち、違うの。さっき純二さんと電話してて、愛してるって言われたから…」 なおみの顔が、また一段と赤くなった。
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