夕陽の中で 第4章

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良子 「…この事はパパに黙っててあげる。なおみにとって、竹本さんがどれだけの存在かよくわかった」 なおみ 「え!?」 良子 「竹本さんは、なおみの心の病を治せるただ一人の人っていうこと」 なおみ 「…うん!」 次の日なおみは、時々ムカムカがあるものの、元気に学校へ登校して行った。テストの結果も、早いものは今日わかる。 こずえ 「なおみ、おはよう。もう大丈夫なの?」 なおみ 「うん。昨日お医者さんへ行って、薬もらってきたから」 こずえ 「お医者さん、なんて?」 なおみ 「うん、恥ずかしいんだけど…、つわりだって」 こずえ 「えーっ!?」 なおみ 「嘘よ。嘘。この1週間、いろいろあったでしょ。そのことで精神的に参ってるって。吐き気はね、想像妊娠のせいなんだって」 こずえ 「想像妊娠?」 なおみ 「うん。いろいろ悩んで、純二さんに抱かれたいとか、子供がほしいとか思うと生理不順になったり、下腹がぷくっと出てきたりするんだって」 こずえ 「へー。で、なおみは竹本さんに抱かれたいって思ったんだ」 なおみ 「う、うん。ちょうどね、お隣りのお姉ちゃんに赤ちゃんが生まれて、昨日も見せてもらってたの。かわいいなぁって思ったらほしくなっちゃって…」 こずえ 「へー」 放課後、クラブへ出ようとするなおみを、先生が呼び止めた。すべてのテストの結果が出たのだ。 担任 「北原」 なおみ 「はい」 担任 「ちょっと職員室に来い」 なおみ 「…はい。何だろう?」 こずえ 「待っててあげるから、行っておいでよ」 なおみ 「うん」 なおみは、職員室に入った。担任の机の上には、なおみの各教科の答案用紙が並べられていた。 担任 「そこへ座りなさい」 また隣の先生の椅子に座らされた。 担任 「どうしたんだ?最近よく頑張って成績上がっていたのに…。今回のテストは、全体的に下がっているぞ」 なおみ 「…はい」 担任 「ひょっとして、キス事件の事で悩んでいたのか?」 なおみ 「…はい」 担任 「池谷も心配してたぞ。俺のせいで上級生にいじめられてるって」 なおみ 「えっ!?守くんが?」 担任 「まぁ下がったといっても全体で50点以内だが…」
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