夕陽の中で 第4章

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なおみ 「先生、修学旅行の自由行動、どうなりますか?」 担任 「全体で100点以上下がったら会わせないということだから、まぁいいだろう」 なおみ 「よかった」 担任 「実はな、先生もその竹本と言う人に会ってみたいんだ」 なおみ 「えっ!?」 担任 「先日連絡したんだ。なかなか感じのいい人じゃないか。ついつい話し込んでしまったよ」 なおみ 「どんなこと話したんですか?」 担任 「お前の事だ。彼はお前の事になると、嬉しそうに休む間もなく話していたぞ。さすが刑事だな。素晴らしい観察力だ。彼の話しを聞いていると、お前の性格、仕草、癖など、手に取るように分かって、聞きながら俺も納得してたんだ」 なおみ 「やだぁ、純二さんったら」 担任 「愛されてる証拠じゃないか。そう照れるな。自由行動のとき、先生に彼を紹介してくれ」 なおみ 「はい、喜んで」 担任 「成績の事はまぁ、原因も分かってることだし、今回は家には連絡しないことにしよう。これからは気をつけろよ。池谷もそろそろ人気が出てくる頃だし…。…キス事件の事は、彼は知っているのか?」 なおみ 「はい。すべて話しました。初めは怒ってたけど、起きてしまったことは仕方ないって、許してくれました」 担任 「そうか。優しいんだな」 なおみ 「…はい」 担任 「…わかった。クラブへ行きなさい」 なおみ 「はい」 そしていよいよ修学旅行の日。今夜の夜行で大阪へ出発する。夕方5時に東京駅集合なのだが、もう4時というのになおみはまだ荷物のチェックをしていた。 なおみ 「あれとあれと…」 その頃、玄関の前に1台の車が止まり、孝行が下りてきた。駅へ一緒に行こうと、なおみを迎えに来たのだ。 孝行 「こんばんは」 良子 「はーい。あっ、孝行くん。迎えに来てくれたの?」 孝行 「兄貴が車で、東京駅まで送ってくれるっていうもんですから…」 良子 「ちょっと待ってね。なおみー」 なおみ 「はーい。今行く」 良子 「もうなおみったら、何度も荷物のチェックしてるのよ」 なおみ 「ごめーん、お待たせ」 良子 「薬持った?」 なおみ 「うん」 良子 「竹本さんへのお土産は?」 なおみ 「持った。じゃ行ってきます」
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