第一章

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中間テストも無事終り、今は梅雨の六月となった。 雨はもう毎日のように降り続けている。   俺はいつものように、自分の席で窓の外を眺めていた。 ある重大な問題を抱えながらな。   ん? その重大な問題とは何かって? 解らないのか? 俺としてはかなりの問題だぜこれは。   だって俺は今、現在進行で未確認生物としかいいようのない、普通じゃないものと生活を共にしているんだからな。   現在その未確認生物……いや、ちっさいオッサンは俺の机の中で、ぐっすりと眠っていやがる。   全く呑気なものだ。 あの奇妙な出会いをした日からもう二週間。 俺はただただ必死でこのちっさいオッサンと、生活を共にしていると言うことだけを隠して過ごしてきたと言うに、等の本人ときたら、どうしてこう寛いでいられるのだろうか。   と言うか俺のこの苦労をコイツは知っているのだろうか? 多分だが、知らないんだろうな。こんな風に、寝ていやがるんだからな。   「ちょっと、アンタ大丈夫?」   と突然話しかけてきたのは、俺の前の席の篠原だった。   「あ? 何が?」と俺。   「何がじゃないわよ。アンタここのところボーッとしてばっかりじゃない。何か悩み事でもあるの?」   悩み事ねぇ……あるにはあるが、とてもじゃないが篠原に相談できるような悩みじゃない。 とりあえず俺は、   「いや、別に。ただこの雨はいつまで降り続けるのだろうなと思ってな」と嘘をついた。   「ふーん、ならいいんだけど…」と篠原は少し口を尖らせた。   「それよりアンタ、私に勝つなんていい度胸してるじゃない」   ハハハ、言い忘れていたが、俺は篠原に中間テストで全テスト合計10点差をつけて勝った。 クラス順位はと言うと俺が6位、篠原が7位と言う結果となった。   因みに久藤はドベだ。   「別に勝ちたくて勝ったわけじゃない」と俺。   「何よそれ? イヤミ?」   「いやいや、そんなつもりはないが、威張っていた割りには…」   と俺が篠原に対して最高のイヤミと言っていいほどの事を言い切る前に、篠原は感付いたのか、俺に顔面右ストレートを喰らわせやがった。   「うぎゃああああ!」   見事に篠原の顔面右ストレートは、俺の鼻にクリティカルヒットし、俺は思わず涙が出そうになった。   「期末では負けないからね!」   と篠原はそう言うと前を向いてしまった。
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