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居間に入ると、テーブルの上には既に出来上がっている朝食が並んでいた。 そして、イスに静かに座っている姉ちゃんの姿。 「葵、そこに座りな」 姉ちゃんの向かい側の席を顎で差され、そこへ大人しく座るオレ。 「…」 「…」 沈黙がオレ達を包む。 目の前の朝食の匂いだけがその場に留まっていた。 「……姉ちゃ――」 「葵」 沈黙を破るためにオレが声を掛けたと同時に、姉ちゃんがオレの名を呼んだ。 「……何?」 「――お誕生日、おめでとう」 …… へっ? 「はっ?」 思いがけない姉ちゃんの言葉に拍子抜けした声を出してしまった。 と同時に、今日がオレの誕生日ということに、当のオレ自体が今更ながら気付いた。
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