封印の紋章

6/29
前へ
/136ページ
次へ
「上之宮?どなたですか?ブロンドの髪の女の子ならお見かけしましたが」 「その娘がそうだろう。ひかるは上之宮孃をしらないのか?」 教団員にそう言われ、ぼくは首を傾げる。聞いたことはあるような気もするけど、よく分からない。 「存じません」 「そうか。上之宮玲菜とは大魔術師のご令嬢のこと。ひかるが見たその娘は名家の生まれの者。彼女もまた魔術を心得ている。」 名家、か。彼女の振る舞いを思い返すと、ああ、確かに、と妙に納得が出来る。 「上級の魔法を使えるのですか、彼女は」 ぼくが質問すると、教団さんはははっと軽やかに笑う。 「それはもちろん、なにせ大魔術師の子だ。高等な術も使える」 やっぱり、大魔術師の娘なんだから高度な魔法も使えるんだろうな。どういう魔法を使うのだろう。ぼくも習ってみたいとは思うけど、大魔術師に教えて頂くだなんて恐れ多い。 だから、彼女が少しうらやましい。 「ひかる、悪いが上之宮孃を呼んできてくれはしないか。私はいちど司教殿のところへ向かわねばならない。そこにいると伝えておくれ。」 「はい、分かりました」 ぼくはそう返事をしてまた奥へと向かう。 長い廊下を少し小走りすると、スニーカーの軽い足音がした。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加