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「上之宮?どなたですか?ブロンドの髪の女の子ならお見かけしましたが」
「その娘がそうだろう。ひかるは上之宮孃をしらないのか?」
教団員にそう言われ、ぼくは首を傾げる。聞いたことはあるような気もするけど、よく分からない。
「存じません」
「そうか。上之宮玲菜とは大魔術師のご令嬢のこと。ひかるが見たその娘は名家の生まれの者。彼女もまた魔術を心得ている。」
名家、か。彼女の振る舞いを思い返すと、ああ、確かに、と妙に納得が出来る。
「上級の魔法を使えるのですか、彼女は」
ぼくが質問すると、教団さんはははっと軽やかに笑う。
「それはもちろん、なにせ大魔術師の子だ。高等な術も使える」
やっぱり、大魔術師の娘なんだから高度な魔法も使えるんだろうな。どういう魔法を使うのだろう。ぼくも習ってみたいとは思うけど、大魔術師に教えて頂くだなんて恐れ多い。
だから、彼女が少しうらやましい。
「ひかる、悪いが上之宮孃を呼んできてくれはしないか。私はいちど司教殿のところへ向かわねばならない。そこにいると伝えておくれ。」
「はい、分かりました」
ぼくはそう返事をしてまた奥へと向かう。
長い廊下を少し小走りすると、スニーカーの軽い足音がした。
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