486人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただ……どうやって家に帰ったらいいのか分かんないだけだし」
「迷ってるよね!? それ絶対迷ってるって言うよね!?」
い、いけない。
つい取り乱して初対面の子に突っ込んでしまった。
でも、彼が迷っているのはどうやら間違いない。
「い、言わないから! 厳密には、家に帰れないのと迷ってるっていうのは色々違うんだよ! 分かる!?」
「ど、どう違うの?」
「だ、だァから、違うんだって! ボクが違うって言ってるんだから、違うんだっての!」
駄々っ子みたいに彼は反論してくる。
あぁ何かもう、その辺はどうでもよくなってきたや。
「分かった。じゃあ……家に帰れないんだっけ?」
「そうだよ! 文句あんの!?」
いやしかし……自分の家に帰れないって、それはそれでどうなのかな。
小学生でも、一人で家にぐらい帰れると思うんだけど。
「文句あんのかって聞いてるんだけど!?」
「あぁ……ごめん。ないです」
何で僕は負けてるんだろう。
……ていうか気がつけば、何か男の子の方から僕に突っかかってくるようになってるし。
「ったく……にしても困ったな。ここが何処なのか、どっから歩いて来たのかさっぱり分かんない」
彼はそう呟きながら、腰に手を当て周囲を見渡した。
確かにこの辺りは住宅街であり細い路地も結構多いから、初めて来た人なんかは迷う事もあるのかもしれない。
小さい頃からこの辺に住んでる僕は、もうこの近辺の地理は大体把握してるけど。
最初のコメントを投稿しよう!