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「ねぇ、お前」
凄くさり気なく『お前』って言われたのは、もしかして僕なのかな。
……まぁ彼、汚物でも見るみたいな目で僕の事を見ているし、きっとそうなんだろう。
ふてぶてしいことこの上ないな、まったく。
親の顔が見てみたい。
「この辺でさ、すっごいボロボロの小屋みたいなのがある所知ってる?」
「すっごいボロボロの……?」
漠然としたヒントだったが、僕の頭の中に一箇所、ある場所が浮かんでいた。
「もしかして、周りが微妙に空き地みたいになってる所?」
「そうソレだよ! 知ってんのお前!?」
知ってる……と素直に答えたくないのは何でだろう。
「まぁ……知ってるけど。多分」
「ホントに!?」
彼は少しだけ嬉しそうに表情を緩めて僕に訊いて来る。
やっと、小学生らしい顔になったな、この子。
「じゃあさ。この紙に――」
彼は短パンのポケットから小さなメモ用紙みたいなのを取り出して、僕に手渡しながら続ける。
「――そこまでの簡単な地図書け」
――命令形て。
僕もいい加減、顔が引きつっているかもしれない。
流石に今の自分の表情に自信が無いよ。
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