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ある屋敷の一室。
コンコンとノック音が響いた。
その音に、女性が気づく。
人の姿をしているが、爬虫類のような尻尾をもつ、淡い赤色の髪の女性だ。
女性の返事を待たずに、扉は開いた。
「おかえりぃ」
女性が、甘えるような高めの声で言葉を紡いだ。
扉から現れたのは、とても中性的な姿の少年。茶色の髪で、赤褐色の眼。身の丈ほどもある大剣を持っている。
「ただいま」
微笑んだ少年とは裏腹に、女性は少し不機嫌そうに尻尾を揺らした。
「もぅ、ウル。私のところに来るときは、女の子の姿にしてって、言ったはずよ」
「で、でも、男の姿の方が強いし、マムのことを守れるよ」
茶色の髪の少年ウルは、そう弁解してみた。
マム(母)と呼ばれた女性アウネリスは、微笑みながら、右手をウルのほうに伸ばした。
そして
「…くっ」
ウルの顔が苦痛に歪んだ。
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