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「…アニエラ」
ウルは名前を確かめるように、小さくつぶやいた。
「お茶の用意は終わりましたので、私は下がります。御用がありましたら、また、お呼びください」
「うん。わかったわぁ」
アニエラは丁寧にお辞儀をして、部屋を去った。
アニエラが去ったあと、ウルはアウネリスとお茶会を楽しんだ。
今のウルにとって、アウネリスと一緒にいること、構ってもらえること、彼女のために頑張ることが、すべてだ。それだけで、安心できる。否、それがないと不安になるのだ。
ふと、何かを思い出したように、アウネリスが顔を上げた。
「どうしたの?」
ウルが尋ねた。
「私、やろうとしてたことが、あるんだった~」
アウネリスは席を立って、挨拶代わりにウルを抱きしめた。
ウルの鼻腔に、甘い香水と、お茶の香りが広がった。
「また、夕食のときに会いましょう」
そう言って、アウネリスは部屋の奥の扉へと、姿を消した。
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