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「マム…」
一人残されたウルは、どうしていいのか分からなかった。
だが、最近はよくある事だ。
少し前までは、ウルで着せ替えをしたり、ずっと一緒にいることが多く、制限時間を設けられているほどだったのだが。
ウルは、カップに残ったお茶を飲み干すと、ため息をついて立ち上がった。
所詮、自分は、土くれから創られた試作品なのだ。
マムが創っている、新しい人形には適うはずない。
だけど…。
ウルは不安に押し潰されそうになり、慌ててアウネリスの部屋を後にした。
「戦闘訓練をすれば、この気持ちは消えるかな…?」
たどり着いた中庭で、ウルは一人ごちた。
そして、左胸に手を当てた。心臓ともいえる本を取り出して、性別を書き換えるためだ。
「ああ、そうだ」
ウルはえぐりだそうとしていた手を、止めた。
夕食ではアウネリスに会う。少年になっても、またすぐに少女にならなくてはならない。
何度も胸をえぐるのは、心地よいものではない。
ウルは仕方なく、スカートの裾から、短剣を取り出した。
「またすぐに、マムに会える」
不安を取り払うように、ウルはしなやかに剣技を繰り広げた。
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