人形

7/7
前へ
/40ページ
次へ
「マム…」 一人残されたウルは、どうしていいのか分からなかった。 だが、最近はよくある事だ。 少し前までは、ウルで着せ替えをしたり、ずっと一緒にいることが多く、制限時間を設けられているほどだったのだが。 ウルは、カップに残ったお茶を飲み干すと、ため息をついて立ち上がった。 所詮、自分は、土くれから創られた試作品なのだ。 マムが創っている、新しい人形には適うはずない。 だけど…。 ウルは不安に押し潰されそうになり、慌ててアウネリスの部屋を後にした。 「戦闘訓練をすれば、この気持ちは消えるかな…?」 たどり着いた中庭で、ウルは一人ごちた。 そして、左胸に手を当てた。心臓ともいえる本を取り出して、性別を書き換えるためだ。 「ああ、そうだ」 ウルはえぐりだそうとしていた手を、止めた。 夕食ではアウネリスに会う。少年になっても、またすぐに少女にならなくてはならない。 何度も胸をえぐるのは、心地よいものではない。 ウルは仕方なく、スカートの裾から、短剣を取り出した。 「またすぐに、マムに会える」 不安を取り払うように、ウルはしなやかに剣技を繰り広げた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加