忘れてしまう物・・・・

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病院に着くと、いつもの 看護師さんが、笑顔で喋る 「桐山さん今日も妹さんのお見舞いですか?」 「はい、一応・・・・」 面会記録書だけ書くと、千智の病室に向かった。 一応ノックする・・・・ まぁ意味は無いのだが・・・・ 「入るな・・・千智・・・・」 夕焼けに包まれた病室に入ると ベッドに寝ている妹がいる 「今日もお見舞いに来たよ千智・・・・」 喋りかけても返事は無い・・・・・ 何故なら、千智は交通事故で目を覚まさない状態だからだ。 あれは3年前だった。 いつもの用に親子で買い物に出かけた。 親父とオカンと千智で出かけた。 俺は受験生なので家で勉強・・・ その帰りに、事故は起こった。 親父たちの車に、前から車が突っ込んだ・・・・。 俺は、電話がかかってきて現場に急いだ。 状況は、親父の車も相手の車も前が潰れていた。        俺の親は、病院で死んだ。 相手の車の運転手に至っては即死だったそうだ。 運転手は、ハンドルが前に出ていて腹部にめり込んでいた。 そして千智は、助かっていた。 だが、目は覚まさない・・・・ 家にいつも誰も居ないのはそのせいだ。 つまり、千智は唯一の家族な訳だ。 「ごめんな千智今日は遅くなって、お兄ちゃんは文化祭で演劇をやることになったんだ。今日はその練習のせいだ」 俺は、いつも語り掛けてやる そうすれば、目覚めるかもしれない 心の何処かで、そう思ってるのだろう 「じゃあ今日はもう帰るな」 俺は千智の病室を後にした。
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