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21**年7月
パパこと高倉健作はロボットになった。
いや、正確にいうとパパこと高倉健作は一週間前に亡くなっており、初七日が終わったこの日、パパこと高倉健作のロボットが高倉家に納入されたのだ。
パパこと高倉健作は一家の主だったが二年もの間、闘病生活を送っていた。
パパの寿命があと僅かだと知った家族はロボットを買うことにした。
やはり目の前からパパがいなくなることが偲びなかったからだ。
ロボットは高額だったがパパの生命保険に少し足せばなんとかなったし、ママこと高倉真弓はそこそこ売れてる作家だったので経済的にも問題がなかった。
ロボットといっても動くのはアームと呼ばれる“手”だけで、外観は昔の大きなブラウン管テレビのようなものだ。その画面にパパの表情が映し出される。
最新型で容姿までそっくりに作り歩くこともできるタイプのものもあったが、それはまだ一般家庭では手の届く金額ではなかった。
パパはこの計画を知らなかった。
言えば必ず反対するとわかっていたので、家族はそれを敢えてパパに話さなかった。
逆にパパを検査だと言って騙し、パパの記憶や思考パターン、音声や発音、表情といった多くの情報をコンピューターにメモリーした。そしてパパの死を受けて、そのデータがロボットに移されたのだ。
そのロボットが今日、高倉家にやって来た。
ママこと高倉真弓が、車椅子を押すように下に小さな車輪の付いたパパをリビングへと招き入れると、チーちゃんこと高校一年の長女千秋と、マー君こと中学二年の長男将が笑顔で迎え入れた。
「パパお帰り」
と彼らが言うと
「ただいま」
と、パパは答えた。
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