パパはロボット

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  「パパの声だ!」 チーちゃんはパパに駆け寄った。 「さあ、コーヒー入れるから二人とも座りなさい」 ママはパパをテーブルに着けると、キッチンに向かいコーヒーカップを並べた。 「マー、あんた何泣いてんのよ」 チーちゃんはマー君の頭をこついて言った。 「だって…だって…パパが…パパが…」 マー君は涙がどんどん溢れて止まらない。 「チーちゃん、新聞取ってくれ」 パパが言った。 「うほっ、来ました来ました、いつもの台詞! ちょっと待っててね、パパ」 チーちゃんは嬉しそうに新聞を取りに行った。 「はい、パパ」 「ああ」 チーちゃんが差し出した新聞をアームが掴む。 しかしパパは新聞がめくれなかった。 「その手じゃ無理よね。私がめくったげる」 「すまんなあ」 「マー君、早く座りなさい。コーヒー入ったわよ」 「うん…うん……パパが…パパが…新聞読んでるぅ…」 「いつまで泣いてんの。バカ」 「ちょっと、パパの顔の位置が低いわねぇ」 「それ、高さ調節できるの?」 「ここにツマミがあるんだけど固いのよ。ちょっとマー君、あんた突っ立ってないで手伝ってちょうだいよ」 「うん…」 「そこ、そこを回して引き上げるの。そうそう」 「これぐらい? チー姉高さ見てよ」 「そんなもんかなあ。あっちょっと高すぎる。もうちょっと下。そこ! オッケー」 「うん。新聞が見やすくなった。さあコーヒー飲みなさい。冷めるぞ」 「はーい」 「うっ、パパ…」 「また泣いてやがんの。ハハハ」 所謂、一家の団欒というものが、ここ高倉家に戻って来た。  
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