コップの中

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僕はキッチンに行くと、珈琲を入れる為にお湯を沸かした。 そして、お湯が沸くまでの間に薬を飲む。 病院で処方された眠剤だ。これが無いと朝まで起きているはめになる。 世間では、珈琲を飲むと眠れないなんて言われているけど、僕は珈琲を飲むと何故か眠れる。 たぶん、ピンと張っていた糸が緩むみたいに心が解れるのだろう。 マグカップを持ったままベランダに出ると、秋の夜風が予想以上に冷たい。ひとつとして星の見えない、汚れた夜空を眺めながら、僕は熱い珈琲をすする。 しばらくすると、手足や体の表面が冷えてくるにも関わらず、体の芯がほてって腋や胸が汗ばんできた。 熱があるわけじゃない。いつものことだ。病院で話してみたこともあるが、主治医は毎回全く効かない薬を出してくれるだけなので、最近では診察室で話題に出すのをやめた。
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