秋桜

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けれど、今の高橋くんは、私よりも随分と高くなっている。 もともと、私が背は低いほうなのだ。小学低学年は、クラスで1番低かったのが何よりも証拠。早く成長した分、止まるのも早くて、中学生になると、周りが大きくなり、いつの間にか、また前から数えたほうが早くなってしまった。 そう…あの時だけ…唯一、背が高かったのは。 ずっと背が高い人に憧れて、羨ましかった低学年。 でも1番背が高くなってほしくなった時に、高くなってしまい、背が高いことに喜びなどの感情は一切湧かなかった。 「依田、隣に座ろうか」 「いいの?誰かと一緒ではないの?」 誰か…例えば、奥さん…なのだけど、それは口にする必要もない。 けれど、奥さんにしてみれば、疚しいことがないとしても、歓迎出来ないよね。 「一人だよ。誘っても誰も興味ないみたいでさ。依田は?」 「私も同じ。でも高橋くんは何でも興味もつのね。昔のまま、変わってない」 高橋くんは、奇跡のような人だった。過去形にするのも可笑しいけれど、少なくとも私の記憶の中では…高橋くんはオールマイティな人だから。 文武両道、知勇兼備、勇猛果敢。 それらが当て嵌まる人。 しかも学級委員長もしていたし、いつも目立つ存在だった。 絵も上手だったし、放送部に入っていたぐらいだから滑舌も良くて。でも…そんな人だから、惹かれたわけではない。 実は、名前…「光政」という名前が珍しくて興味を抱いたのが最初。それから席が近くになり、同じ班になったことで、一緒に、グループでだけれど、作業をすることが多くなった。 一緒にいると楽しかった。二人きりになることはなかったけれど、時間を共有していくたびに惹かれて、いつの間にか…忘れられない恋となっていった。 けれど、大人の都合で、私は六年生になる前に隣の市へ引っ越してしまった。 卒業アルバムは当然、その引っ越した先の小学校のものしか持っていない。私にとって、高橋くんと繋ぐ写真と言えば、集合写真の一枚だけ。 引っ越した先の小学校で、辛い目を経験してきた私を支えてくれたのは、高橋くんへの想い。 高橋くんに相応しい、次に会った時に笑われないように、強くなりたいという…。 「何でもというわけではないけれど、視野を広げたいというのだろうか」 「分かるわ。私も。おかげで多趣味になったけどね」 それは、高橋くんを意識してではない。でも影響がなかったわけではないと思う。
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