第九章 黄昏

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「あの時、お前に助言したのは、一刻も早く次元の精霊の力を目覚めさせたかったからだ、それ以外の何物でもない」 ひどく淡々とした口調で、ミザールは俺に告げた。 ……そんな、じゃあやっぱりアッシュがミザールなのか。 「では、我はこの辺りで失礼させてもおう。 もう、目的も果たしたことだしな」 そう言い、ミザールは踵を返す。 「待てよ……」 俺とアラン、どちらからともなく同時に前へと歩み出た。 恐らく、アランも俺と同じことを考えているはずだ。 他のズィーベン・アストルムがいない今こそ、最強と目される黒のミザールを倒す絶好のチャンスだ。 それに、こちらは元ズィーベン・アストルムのアラン。 そして、俺はまだ断絶者が一回使える状態だ。 今を逃したら、こんな好機は二度と訪れないかもしれない。 俺は、刀を再び正眼に構え、切っ先をミザールの喉元へ向けた。 「何の真似だ? よもや、我と戦おうとでも?」 「あぁ、そうだ。今ここでお前を倒す!!」 刀を素早く振り、翡翠の衝撃波をミザールへと放つ。 だが、ミザールは剣の翼を羽ばたかせ、上空へと飛翔して次元裂破を回避してしまった。 次いで、アランが風と雷の衝撃波を放つが、見事な飛翔術でミザールは、その衝撃波を回避していく。 「十二翼の羽撃-ルシフェル・ ウィング-!!」 ミザールの背に広がる六本二対の剣が、一勢に飛翔する。 翼がなくなり、ミザールは再び断崖の上へと足を付ける。
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