第一章 平穏

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オレは、アリアに背中を洗ってもらうと、さっさと風呂を出た。 別に恥ずかしかったわけではない。 アリアのことは大切だが、好き……とかく、恋愛感情というのは抱いていないと思う。 好きか嫌いかと言われたら、そりゃあ好きなのだがそれは、姉や妹に対する感情のようなものである。 そう、オレとアリアは兄妹みたいなもんだ。 いい加減な兄と、しっかり者の妹……そんな感じだ。 オレは部屋に行き、鞄に着替や必要なものを詰め込んだ。 アリアは、既に荷造りを終えていて、テーブルの上に鞄が置いてあり、アリアは椅子に腰を掛けていた。 「カストル君は支度が早いんですね」 クスッとアリアが微笑みながら言ってきた。 オレは、「まぁな」と答えて隣りに腰掛けた。 ――コンコンコン その時、玄関の戸を叩く音が響き、次いで、男の声がした。 「カストル、支度は済んだかい?」 そう言って入ってきたのは、アリアの父ヴィルゴだった。 整った顔つきに少し茶色い短い髪。 背はオレより幾分か高い……175くらいだろうか。 「はい、もう行けますよ」 オレは、間髪入れずに返事をした。 「よし、では行こうか。カストル、アリア」
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