第九章 黄昏

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「あ……ぁあ」 いつの間に目を覚ましたのだろうか、アランの肩に支えられていたドゥーベが呻き声を上げた。 だが、ドゥーベの目は虚空を見つめ、焦点が合っていない。 その表情は、何かに怯えているように歪んでいる。 「おい、一体どう──「……十二翼の羽撃-ルシフェル ・ウィング-」 どうした? そう訊こうとした俺の声は、一つの声によって遮断された。 ――トスッ…… その声と同期して、闇に染められた漆黒の刃が、ドゥーベの胸を貫いた。 ドゥーベの胸の上で、鮮血が花火のように爆ぜる。 ――なっ!! 余りに突然の出来事に、俺は言葉を発せず、ただ眼前の光景を見つめることしか出来ずにいた。 それは皆も同じで、誰一人身動き一つ、言葉一つ出せないでいる。 そして、さらなる衝撃が俺たちを襲う。 一本、また一本……と、次々と漆黒の剣がドゥーベの身体に突き刺さっていく。 「ぐはぁ"ぁ!!」 剣が体に突き刺さっていく激痛に、苦しみ喘ぐドゥーベ。 だが、その声を耳障りだと言わんばかりに、呻く口へと向かって剣が突き刺さる。 隣りにいるアリアは、その残虐な行為に、耐え切れずに目を逸した。 やがて、ドゥーベの体は糸が切れるように、力なく地面に崩れ落ちた。 俺は、この殺戮劇を作り出した張本人の声が降ってきた──ドゥーベが見つめていた虚空へと顔を向ける。
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