第九章 黄昏

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ミザールの放った漆黒の剣は、縦横無尽上下左右からまるで生きているかのように、自在に飛び交いながら襲いかかってくる。 真上から来た剣を、バックステップで躱し、次いで左から飛んできた剣を次元刀で弾く。 そして、右と後ろから飛んでくる剣を次元裂破で相殺。 視界の端に映るアランも、同じように縦横無尽に飛び回る剣を防ぐのに手一杯のようだ。 全部で十二本、一人当たり六本の割合で襲いくるミザールの牙は、間違いなく奴の精霊だろう。 ――ならば!! 素早く、腰の袋から覇者の印を取り出し、そのアステラジーを次元刀へと送り込む。 薄く青みがかった白銀の刀身が弾け、エメラルドのように眩く輝く光の刀身が姿を現す。 「いっけぇぇえ!! 次元裂破ぁぁッ!!」 空中を飛び交う、三本の剣に向かって、断絶者の力が付与された渾身の衝撃波を放つ。 一つの巨大なエネルギー体と化した翡翠の衝撃波は、漆黒に煌めく虚空の牙たちへと吸い込まれるように飛んでいく。 狙い違わず、次元裂破は漆黒の剣へと命中した。 ……そう、確かに命中したように見えたのだ。 しかし── 「なん、だと……」 アランに向けていた六本の剣で、小さいながらも翼を形成したミザールが、宙に浮かび、俺が狙った三本の剣の前にいたのだ。 「さすがは次元の精霊……凄まじいエネルギー波だ」 右手で額を軽く拭いながら、ミザールは俺を睥睨している。 「っ……なんでだ、断絶者の力を付与した次元裂破を……どうして防げるんだ!」 俺は、怒りと混乱で頭が真っ白になっていた。 だが、愕然としていたのは俺だけではない。 アランやアリアもが、口を半開きにし、驚愕の表情を作っている。
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