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「フッ、我が闇の精霊エストレジャの力だ。
次元の精霊程ではないが、コイツも異次元への接続が可能なのだよ。
その異次元へ、お前の技を送っただけだ」
ミザールは短く一呼吸入れた後、再び口を開いた。
「さて、そろそろ終幕としよう……。
双牙裂穿!!」
素早く腕を払うと、近くを飛んでいた剣が反応し、俺に狙いを定め、一直線に向かってきた。
茫然としていた俺は、反応が遅れ、すぐに避けることが出来なかった。
――しまった……!!
殺られる!!
思考する間にも剣は速度を上げて、向かってくる。
──あと、1m。
迫りくる死を予感し、俺は思わず目を瞑った。
「ッカストル!!」
叫び声がした次の瞬間、俺の体は大きく宙を舞った。
いや、そうではない。誰かに突き飛ばされて、吹き飛んだのだ。
「っ……一体……?」
吹き飛ばされてふらつく頭を左右に振り、俺は視線を自分が吹き飛ばされた方へと向ける。
そこには──
「嫌ぁぁぁぁぁ!!
お父さん、お父さぁぁん!!」
ヴィルゴだ。ヴィルゴが、その体に二振の剣を浴びて、仁王立ちするように立ち尽くしていた。
アリアの絶叫にも反応せず、ただ立っていた。
「死して尚立つか。
敵ながら見事だ……。
カストル、いやカズト。
お前の命、今はまだ預けておこう」
ミザールは、そう言い残し、朱色の空へと溶けていく。
「お父さん……お父さん……うぅ」
アリアの啜り泣く声が、虚ろになった頭に響く。
アリア……。
――俺のせいだ。
ヴィルゴさんを殺したのは、俺だ。
俺がしっかりしていれば、こんなことには!!
「くっ、うぁ、ウワァァァ"ァ"!!」
けたたましく慟哭する俺の声は、天へと吸い込まれていく。
遠い山に墜ちていく禍々しい程の紅に染まった陽星が、その姿を少しずつ、少しずつ消していった。
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