第十章 黎明

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――どうして、俺はここにいるんだろう? ――どうして、俺は戦っていたんだろう? ――どうして……。 ――守りたかったんだ、本当は。 ――戦いたくなんてなかった、本当は。最初から……。 ――でも、俺は今ここまで来てしまった。 厄災の封印を解き、剰え(あまつさえ)、アリアの父さんをも死なせてしまった。 ……いや、あれは俺が殺したようなものか。 アリアは、俺のせいじゃないと言ってくれたが……あれは、明らかに俺のせいだ。 俺が、ミザールの力に気を取られさえしなければ、ヴィルゴさんは死なずに済んでいたんだ。 そう、本当はカストルじゃない、偽者の俺なんかの為に死なずに済んでいたんだ! ……偽者の俺なんかの為に……。 ――デネボラ神殿での戦いから一日が経ち、俺たちはアルギエバの街へと戻り、宿屋にて、今後の方針について話し合っていた。 「ズィーベン・アストルムを相手にするとなると、やはり一番の問題は戦力だな」 顎に手を当てながら、部屋を歩き回っていたアランが、椅子に腰をどかっと下ろす。 「……ですね、アランさん。 何かいい案でもあるんですか?」 「あぁ、上手くいけば戦力と兵力を一遍に揃えることができるぞ。 ……但し、かなりの博打みたいなもんだがな」 少し険しい表情になったアランが、再び椅子から立上がり、窓の外へと視線を移す。 釣られるように、俺も窓の外へと視線を移した。 窓の外には、穏やかな町並みが広がり、朝靄の中を小鳥たちが飛び交っている。 ……本当に平和な風景だ。
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