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太陽と負けずとも劣らない輝きを持つスマイルを受け、可奈は固まった。言葉が緊張のあまり出てこないのと、実際なんて答えたらいいのかわからないとで、
「き、気まぐれかな」
そうとしか答えられない。いや、むしろ正解だろう。華だってここまでくると意地だけでやってるに違いない。
「え? ただの気まぐれであんなに一生懸命に?」
「う、うん。華って変わってるから」
これも正論だ。
華は可奈が数えていただけでも三十回目の不時着を行うと、ちらりとこっちを見てきた。不機嫌そうな目で。遠くから叫んでいわく、
「可奈ぁ! あんたも鉄棒部の一員なら、回りなさい! あたし一人じゃ寂しいんだよぉ」
この時ばかりは華の軽率さを呪った。この台詞から片原くんは間違いなく華=変人=可奈の方程式を組み立てるだろう。予想通り、
「鉄棒部?」
と、呆気にとられたような顔で彼はつぶやいた。ああ、終わった、と可奈は目の前が真っ白になった。可奈にはもう戦うポケモンがいないってか、ハハハ、と自虐的に笑ってしまう。が、
「逢坂さんも頑張ってるんだ。凄いなぁ。目的は知らないけど、凄いよ」
片原くんは百万ワット(可奈主観)の輝きを放つ笑顔でおっしゃった。可奈の目の前は今度はまったく逆の意味で真っ白になった。
「え? 鉄棒だよ? 女の子が鉄棒に夢中なんだよ? 変じゃないの?」
当然の疑問を口にすると、片原くんは柔和な笑顔から、引き締まった真面目な顔になる。
「何に全力を尽くすかが問題じゃない。全力を出せるかどうか、一生懸命やれるかどうかが問題なんだよ。それがなんであれ、他人に邪魔する権利はないし、しちゃいけない。頑張れるっていうのは、とっても凄いことだと僕は思うんだよ」
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