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「そんなこといって抱き着かれるの好きなくせにぃ。このツンデレがー」
うりうり、と華は可奈の頬に指を押し付けた。ピキ、と可奈の額に青筋が走る。
「あんたがそんなんだからねぇ。私は苦労するの」
◇
「この学校で一番アツアツなカップルは誰ですかぁ?」
後日。可奈が昨夜のゲームで熱中しすぎたため、寝不足から惰眠を貪っていると、すぐ近くから女子のキャピキャピした話し声が聞こえてきた。この声の大きさ、場所、高さ。明らかに自分に聞かせようとしている。
「ハナカナー!」
案の定、後ろに音譜マークの一つや二つ付属しそうな軽快な調子で他の女子数名が答えた。今のところはまだ睡眠欲のほうが勝っているから、黙っといてやろう。だが、一通り笑った後、しぃーんと静まり返ることから、確実に自分の反応を待っている様子だった。悪いが、まだ眠い。
「ハナカナー!!」
ZZZ……。
「ハナカナー!!」
ZZZ。
「ハナカ――」
「うるさい」
本っ当にうるさい。可奈は寝起きそのままの不機嫌フェイスですぐ傍らに集う女子の集団を睨みつける。
「何度もいってるでしょ。私と可奈はただの友達」
「はい、ここ重要!」と、一人が言えば、
「テストに出るぞー」と、他の女子生徒も悪ノリして言う。流石の可奈もプッチンときた。
「しつこいって言ってるでしょーがぁ!」
キャー、と可奈が起き上がると同時に蜘蛛の子を散らすかのように散開する女子ども。恐怖の悲鳴というより、歓喜の歓声。こうなることを楽しんでいるのは丸わかりだが、可奈の性分として、しつこいのは嫌いだ。だから、無視などせず、全力で仕留める。だからからかわれるんだよ、とは誰も忠告してあげてはいなかった。
一通り制裁を加え、陽気に笑うMっ娘たちの前に立ち塞がり、可奈は言った。
「私と華は単なる友達。次に変なこといったら、あんたらねぇ――」
「――え?」
パサリ、と背後からはスーパーの袋が落ちた音。
「あの熱い夜は嘘だったの!?」
華ぁぁぁぁぁッ! あんたまで悪ノリすんじゃなぁぁぁいッ! 可奈は内心あらん限りの大声で怒鳴った。
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