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「あたしとは遊びだったのねぇぇぇぇッ!」
絶叫しながら教室を飛び出していく、華。その背を見送りながら、可奈はため息をついた。過去、あの馬鹿はこういうノリで自分が追いかけなかったがために、屋上で飛び降りかけたことがあった(勿論、華からすれば冗談)。それをガチで止めに入った可奈は、放っておくことができない。
「華の馬鹿ぁ!」
そうやって律義に追い掛けるから、またしても皆にからかわれる。もはや可奈のツンデレは公称と化していた。
◇
「今日もするのー?」
相変わらず鉄棒の前に立つ変人の姿を見ながら、可奈は何度目かもうわからない呆れのため息をついた。
これでもう一週間が経つ。休日を除いて華は毎日ここでくるくるやっていた。そんな彼女に毎回付き合ってあげている私ってなんてお人よしなのかしら、と憂いて、可奈は砂場の隅に置いてあるベンチに腰かけた。
くるり、ずしゃ。くるり、ずしゃ。定期的に繰り返されるシーン、リズム。よくもまあそこまで忠実に再現できるものだ。そう思ってただなんとなーく眺めているだけの可奈だったが、段々まどろみはじめた。そうだ。いつもこの時間に屋っていたゲームの時間が夜に回されるから、必然的に眠くなるんだ。一度、目をこすってみるも、一向に目は開こうとはしてくれない。ついに睡眠欲に屈しようかというとき、背後から声がかかった。
「へぇ。毎日鉄棒で遊んでるってのは、野崎さん達だったの?」
「んあ?」
重いっきり寝起きのそれで返事をした可奈。そして、その声の主を振り返って確認すると、
「ふぇ?」
今まで糸のようだった目が、今度は点になった。
「か、片原……くん?」
「うん。おはよ」
……ぎ、
ぎゃぁぁぁぁあぁ!?
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