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「宮ちゃんがあの二人放置して京都散策行くなら私も行く~!」
語尾にハートをつける勢いで裕子は言う。
宮は頭も人柄も良いがため、多くの人に頼りにされているが裕子は頼りにしているというレベルではない。
宮を崇拝しているのだ。
裕子が宮にくっついてる間にも話は着々と進んでいく。
美緒が仕切り直すように手を打って注目を集め、行き先の希望を募る。
「んじゃあうちらは今からどこ行こ――」
「池田屋行きたーい!!」
「うちもうちもー!」
「ちょっ、どっから湧いて出た!? テレポート!?」
が、美緒の語尾をどこから湧いて出たのか明日香と有希が攫い、それを茉莉が突っ込んだ。
確かにほんの数秒前まで世界は明日香&有希と美緒&千秋&菊&茉莉&宮&裕子とで二分されていたのだ。
茉莉が二人はテレポートしたのかと錯覚してしまうのも無理はない。
幕末、新選組の名を京都中に轟かせたのが世に有名な池田屋事件。
旅館池田屋にて攘夷志士たちが天皇を連れ去る計画をしたのを事前に知った新選組が未然に防いだのである。
教科書ではほとんど語られないこの事件についても歴史――特に幕末関係には詳しい明日香と有希なため、当然知っているわけだ。
いつものことなのでその二人以外は半ば諦めの視線を彼女らに向けていた。
「んー、じゃあ池田屋行く?」
千秋が明日香と有希以外に訊くまでもなく二人は走り出していた。それこそ陸上選手並のスピードで。
そして、明日香と有希は地平線の彼方へと消えた。
が、頭の回転が速い菊はあることに気付く。
「あの方向音痴二人組が先行っちゃったけど大丈夫なん?」
「…………あ」
そこで一同は明日香と有希が二人して超がつくほどの方向音痴であることに気が付いた。
「まぁ、携帯もあるし、なんとかなるでしょ」
千秋はこんな時も至ってマイペースを保っていた。
「とりあえず急いで二人を追いかけようか」
宮はかばんから地図を取り出し、一同はそれを頼りにひとまず池田屋へと向かったのである。
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