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その頃、明日香と有希はと言うと――
「ねぇねぇ、明日香」
「ん?」
「なんかうち今日初めて池田屋に行くのに……この道知ってる気がする」
「オゥ! 奇遇だな! うちもだ!」
「……マジでか」
最初こそ京の町を爆走していた二人だが、疲れたのか歩きながらのんびりと言葉を交わしていた。
普段は方向音痴丸出しで、目を離したら目的地の逆方向に進んで行く二人だが、不思議と今日は違う。
まるで生まれ育った町を歩いているかの如く、だ。
もちろん彼女らの出身は京都ではない、京都には以前一度来たことはあるもののその時は前川邸や八木邸や壬生寺など壬生周辺を徘徊しただけで池田屋へは行っていない。
なのに知っているどころかどこか懐かしささえ感じる不思議。
ごくごく普通の女子高生八人が歴史に翻弄されることなど彼女らはまだ知らない。
運命の歯車はこの時から着実に回り始めていたのだから――……。
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