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見覚えの全くない部屋に上之宮玲菜(うえのみやれいな)はいた。周囲を見回さなくとも、ここが自分の部屋でないことは一目瞭然である。
明らかに安物と分かるソファが部屋の中央にあるガラステーブルを三方囲むような形で配置されており、テーブルの上には吸い殻が山となった硝子製の灰皿が置かれている。
床はフローリングで、部屋を分断するようにクリーム色のカーテンで仕切られた一二畳程度の広さの白い部屋。
「ここは……、病院か?」
上之宮玲菜はなにも当てずっぽうで言っているワケではない。
部屋の雰囲気が病院に酷似していること、そして何より薬品の匂いが染み付いた部屋だから、そう予想しただけである。
更に付け加えるのなら、玲菜には『病院』という施設に来るだけの理由があった。
† † †
事の起こりは――、ついさっきのことである。
一六歳の玲菜は当然のように高校へと通っており、その授業も終わった放課後。
彼女は数人の友人と別れ、迎えのリムジンに乗り込み自宅へと帰る。
普通なら部活や友人との遊びに行くものだが、生憎と上之宮玲菜という少女は『普通』ではない。
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