a Prologue

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     リムジンでの登下校をしている時点で普通とは言い難いのだが、それは玲菜の父親が美容関係で成功を収めた『お嬢様』である為だ。  その登下校の仕方には父親の有り余る娘への溺愛精神の有無にも起因するのだが、今は全くもって関係ない為、割愛する。  まだ明るい時間帯に帰宅した玲菜は、玄関口に横付けしたリムジンの後部座席から降車し、いつものように扉を開けて家へ入る。 「玲菜ちゃん、お帰りなさい」 「ただいま戻りました、母様」  出迎えたのはメイドという上流階級の家に必要不可欠な者ではなく、玲菜の実母。  玲菜と同じ陽光に照らされ美しく煌めく金髪に琥珀色の瞳を瞼の裏に隠しているかのように笑顔を絶やさない女性。  着ているものも、桃色のセーターに長い白のロングスカートという『清楚』という言葉がしっくりくる穏やかな母親である。  父親は昨日からビジネスの為に海外へ飛んでおり、家へ帰るのは一週間後となる。 「玲菜ちゃん、美味しいお茶がありますから、あとで一緒しましょ」 「すみません。私は少し調べものがしたいので後日いただきます」
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