a Prologue

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     玲菜ちゃんのいけず~、という母親の声を背中で受け流しつつ、彼女は自室のある二階へと上がる。  彼女の部屋は天蓋こそついていないが、キングサイズのベッドに白革張りのソファにアンティークなテーブル。  高級感漂う数々の家具たちが存在感を放っているが、そんなもの玲菜の部屋ではオマケでしかない。  彼女の部屋の主役は、三メートル近い高さを誇る本棚であり、それは小さな書庫のように広がっているのである。  今でこそ知識の多くはコンピューターで繋がりネットワーク化してはいるものの、古い時代の知識は電子化されていないものがほとんどである。  あるいは、隠されたまま日の目を浴びずに隠蔽されたまま世界のどこかで眠っているものもある。  大英博物館とまではいかないまでも、玲菜の部屋の本棚には世界的価値のある蔵書も数多く納められている。  その全ては『魔術』という不可思議なものを記したものであるのだが。  玲菜の部屋に何故そんな蔵書があるのかというと、彼女には『令嬢』とは違う他者に秘匿としている『もう一つの顔』がある。 「魔導師エイボンが著したとされるエイボンの書(象牙の書ともいう)にも手掛かりはなかったな」
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