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魔導書という怪しすぎるものを手にしていることからも予想は出来ているだろうが、玲菜のもう一つの顔とは『魔術師』というものである。
簡単に言えば、六〇億の人口に対して世界中で一〇〇〇〇人程度しか存在しない異能者のことである。
魔術師となるかどうかは血筋により決められており、玲菜が魔術師ということは必然的に父親か母親、又は両方が魔術師ということになるのだが、それはのちほど。
そして、彼女は一人の少年を探す為に世界中の魔導書を読み漁り、その行方を探しているのだ。
その『エイボンの書』だけでもかなりの値打ちものであるのだが、他にも『金枝篇(きんしへん)』や『悪魔崇拝』、『無名祭』、『ロガエスの書』に、果ては最古の魔道書である『ナトコ写本』まで取り揃えられており、魔術師という人種には宝の山に見えるものである。
「ナトコ写本を調べようにも解読出来ない……、いよいよ手詰まりになってきたな」
ふう、という嘆息ののち、玲菜は『インキュナブラ』という蔵書を手に取る。
もう何度も何度も読み返している為か、一五〇〇年以上も前の蔵書だが、その表紙はもっと長い時を経ているかのようにボロボロであった。
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