押し寄せる孤独

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「十二宮娘。の、十二宮娘。による、十二宮娘。のための、12か月連続リリース大作戦」の3枚目『群青のヴァーゴ』が、織姫にメールの着信を告げる。  from ひこくん  subject 楽しかったね! 無事に帰れたかな?七夕の夜は、本当に楽しくて、嬉しくて、幸せだった!思い出すだけで、興奮しちゃうな!また一年間、離れ離れになっちゃうけど、毎日メール欠かさないからね!おりちゃん、愛してる! 携帯電話の画面の向こうに、彦星の、少し意地悪な笑顔が浮かびあがる。 まるで胸の奥に、血が滲むほど強く包帯を巻きつけられているかのように、切ない想いがじんわりと染み出していく。そして、押し寄せる寂しさを隠すように呟く。 「ひこくん……」 二人は互いに体感し、理解していた。至福の時間が過ぎ去った後の、孤独の時間が持つ憂いと痛みを。儚い夜の夢は、閃光の如く、一瞬にして瞬き、その後には、長い長い、殺風景な現実が待ち受けているのである。電波で繋がれた、滑稽で温かみのない日々の繰り返し…… どこか終わりを求めていた。無機的な媒体を介しての交わりに、虚無感を抱き始めていた。しかし、なぜか安心できるような気もしていた。繋がり合えている気分になれた。織姫は、思い煩いつつも、頑なに返信を打ち始めたのであった……
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