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計兎side
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「瀧哉…お前本当はあの時起きて全部聴いてたんだろ。」
「ん~何の話?」
瀧哉は俺の三歩前を歩き、両手を頭の後ろで組みながら気の抜けた声を上げている。
「とぼけるな。あの状況を理解したからこそ俺と橘の間に入って止めた事は分かってるんだよ。しかもあんな大声であーの名前を言いやがって。
隠そうとすんならてめぇといえどぶん殴るぞ。」
「っと、殴るのは勘弁。でもあのタイミングで俺が邪魔しなきゃ勘の良い奴ならバレてたぞ、親父さんの事。まだバレたくないんだろ?
それにあそこにはうちのチームの奴らもいたし、有鈴の存在を分からせるには叫んだ方が手っ取り早かったんだよ。」
瀧哉は俺の拳を軽々と避け、此方に目線を向けると意味深な笑顔を俺に向けてきた。
……ちっ、全部お見通しって訳か。
瀧哉がさっき自分で言っていたが《先読みの眠り鼠》という通り名は髪色といつも寝ている所、そしてこの頭の回転の良さからきている。
言葉の端々から相手が次にどんな言動をするかを予想、先読みし、即座にそれを実行する。
簡単そうに思えて意外に難しいからこいつのそういう部分は素直に凄いと思うが、この余裕綽々といった表情で自分の思考を読まれているかと思うと正直ムカつく。
「…物凄く不本意だが正直助かった。奴らはあーを次期総長にする事を認めてねぇ。
だが親父の、あの伝説の藤原 恭一だと知れば奴らは手放しで認めるだろうよ。でもそれじゃあ意味ねぇんだ。」
俺はいつの間にか拳を作り、それを握っていた。
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