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『彼が死んだ』
その知らせを受けたのが、マナが社会に出て二年目の夏だった。
しかも、奇しくも彼と付き合いはじめた日だった。
彼と記念日を祝う約束をしていたので、急いで自宅に帰り料理の支度を終えて、彼を待っている最中だった。
マナは電話口から動けなくなった。
しかし、すぐに我に返り病院に向かった。
その途中、夢であってほしいと何度も何度も祈った。
だが、その願いも虚しく、全て現実だった。
白く眠ったような顔。
そんな彼をみて泣く両親。
マナを見た彼の母親が『飛び出した猫を避けようとして…………』と涙ぐみながら教えてくれたが、マナには聞こえていなかった。
マナは、ふらふらと彼に近付き動かない手に触れた。
びっくりするほど冷たかった。
『ねぇ、起きてよ』
マナは彼の手を頬にかざしながら震える声で呼び掛ける。
『ねえ』
ぼろぼろと眼から涙が零れ落ちる。
『ねぇってば……』
何度も呼び掛けるのに、彼は何の反応もしない。
『起きてよ……。今日、約束したでしょ?星の話を聞かせて…………』
ぎゅっと力強く彼の手を握り締める。
冷たい冷たい彼の手が、ひどくひどく切なかった。
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